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南部鉄器とは|400年以上の歴史を持つ日本の伝統工芸品

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11月 22, 2024

南部鉄器とは|400年以上の歴史を持つ日本の伝統工芸品

南部鉄器は、岩手県の盛岡市と奥州市を中心に作られている伝統的な鉄鋳物工芸品です。その歴史は400年以上にわたり、独特の製法と美しさで日本のみならず世界中で愛されています。

 

本記事では、その南部鉄器の歴史や種類、特徴、お手入れ方法について紹介していきます。

南部鉄器の歴史

南部鉄器の歴史は、江戸時代初期にまでさかのぼります。17世紀半ば、岩手の地に根付いた南部藩が、茶の湯文化と鋳物技術の融合を目指し、この伝統工芸の礎を築きました。

 

盛岡の地は、古来より豊かな鉄資源に恵まれ、鋳物産業の発展に適した土地柄でした。南部藩は、この地の利を活かし、腕利きの鋳物師たちを集めて、鋳物生産の振興に力を注ぎました。同時に、茶道に深い造詣を持つ藩主の意向により、1659年(万治2年)、京の都より名高い釜師、初代小泉仁左衛門が招かれ、城下町に湯釜の製作所が設けられました。

 

やがて、南部藩で使用されるすべての茶の湯釜は、この地で作られるようになり、その品質の高さから献上品としての地位を確立していきました。時が過ぎ、3代目小泉仁左衛門の時代には、茶の湯釜をより実用的にした「南部鉄瓶」が誕生。この革新的な器は、湯沸かしの道具として瞬く間に人々の生活に浸透していきました。

 

明治時代に入ると、南部鉄器の認知度は更に上がっていきます。1908年(明治41年)、東北地方を訪れた皇太子(後の大正天皇)の御前で、8代小泉仁左衛門が南部鉄器を製作しました。この様子が全国紙で報じられ、南部鉄器の名は一躍全国に知れ渡ることとなりました。現在、南部鉄器の伝統は、岩手県の盛岡市と奥州市水沢区という二大産地に受け継がれています。

南部鉄器の主要生産地

盛岡市

盛岡の南部鉄器は、1659年(万治2年)に南部藩主が京都から釜師の初代小泉仁左衛門を招いて茶の湯釜を作らせたことが始まりとされています1。当時の南部藩主は茶道に造詣が深く、藩内で良質な鉄資源が採れることから、自藩での茶の湯釜制作を思い立ったのです。そのため、歴史的背景として盛岡の南部鉄器は茶道文化との結びつきが強いとされています。

奥州市水沢区

奥州市水沢の南部鉄器(別名:水沢鋳物)の歴史は、さらに古く平安時代後期にまでさかのぼります。約950年前、平泉を中心に東北地方を治めていた奥州藤原氏が近江国(現在の滋賀県)から鋳物師を招いたことが起源とされています。また、奥州の南部鉄器は日常生活用品としての発展が特徴的で、普段使用する道具としての機能性が重視されています。

 

南部鉄器の特徴

ここからは、南部鉄器の特徴を見ていきます。

1. 錆びにくく長持ち

南部鉄器は、製造の際に高温で焼き上げることで表面に酸化皮膜が形成され、錆びにくくなっています。適切なお手入れをすれば、100年以上使い続けることも可能です。

2. 熱の伝わりが均一

鉄の優れた熱伝導性により、南部鉄器は熱を均一に伝えます。これにより、料理を美味しく仕上げることができます。

3. 優れた保温性

南部鉄器は、熱を長く保つ性質があります。アルミ鍋と比べて1.5倍も熱が長持ちするため、エネルギー効率が良く、料理の温度を保つのに適しています。

4. 独特の風合い

南部鉄器は、ざらりとした質感と重厚感のある外観が特徴です。素朴で無骨な見た目ながらも深みのある美しさを持っています。また、使い込むほどに味わいが増し、使用環境によって異なる風合いが出てくるのも特徴です。

5. 鉄分の補給

南部鉄器を使用することで、料理に鉄分が溶け出し、自然な形で鉄分を補給することができます。南部鉄器から溶出されるのは体に吸収されやすい二価鉄のため、近年では健康面でも注目されています。

南部鉄器の種類

「南部鉄器といえば鉄瓶」というイメージがあるかもしれませんが、様々な種類があります。主なものは以下の通りです。

鉄瓶

南部鉄器の代表的な製品です。お湯を沸かすのに使用され、直火にかけることができます。表面には様々な紋様が施されており、中でも「アラレ紋様」(表面にポコポコした突起がある)が特徴的です。

当ショールームでは、IHコンロにも対応している鉄瓶を取扱いしております。
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鉄急須

内側がホーローでコーティングされており、お茶を入れるのに使用されます。直火にはかけられません。

鉄鍋・フライパン

熱の伝わりが均一で、焦げ付きにくいのが特徴です。IH調理器に対応した製品もあります。

風鈴

南部鉄器の技術を活かした風鈴も人気です。涼やかな音色が特徴です。

その他

鍋敷き、オブジェ、アクセサリーなど、現代の生活に合わせた様々な製品が作られています。

南部鉄器の製造工程

南部鉄器の製造は、以下のような工程で行われます。

  1. 作図:鉄器の外観を決め、図面を作成します。
  2. 木型作り:図面をもとに、鋳型を作るための木型を制作します。
  3. 鋳型作り:木型を使って、砂と粘土を混ぜた鋳型を作ります。
  4. 溶解・鋳込み:鉄を溶かし、鋳型に流し込みます。
  5. 仕上げ:冷めた鉄器を型から取り出し、表面を磨いたり紋様を施したりします。
  6. 焼き入れ:高温で焼き入れを行い、表面に酸化皮膜を形成します。

これらの工程は、熟練した職人の手によって丁寧に行われます。

南部鉄器の使い方とお手入れ

南部鉄器を長く愛用するためには、適切な使い方とお手入れが重要です。

鉄瓶

使用時

  • 内部を軽く水ですすぎます。
  • 硬水を八分目まで注ぎ、20分ほど沸騰させます。
  • お湯を捨て、余熱で内部を乾かします。

この工程を3回ほど繰り返します。

使用後

  • 中の水分を完全に乾かします。
  • 梅雨時期など乾きにくい季節は、10〜20秒ほど空炊きするとよいでしょう。

鉄急須

  • 使い始めや使用後は、内部と茶こし、ふたを柔らかいスポンジでお湯洗いします。
  • 使用後は乾いた布で水気を拭き取り、よく乾燥させます。
  • 直火にかけることはできません。

鉄鍋

使用時(油ならし)

  • たわしで水洗いし、弱火〜中火で空焚きして水分を蒸発させます。
  • 火を弱めて鍋底を覆うくらいに油を入れ、刻んだ葉野菜を入れて2〜3分炒めます。
  • 野菜を取り出し、鉄鍋が冷めたらたわしを使って水洗いします。

 

使用後

  • クレンザーは使用せず、天然素材のたわしやブラシで水洗いします。
  • 洗浄後に水気を拭き、空焚きして冷まします。

南部鉄器の魅力と現代での評価

南部鉄器は、その機能性の高さと美しさから国内外問わず高い評価を受けています。

国内での評価

1975年(昭和50年)には、南部鉄器は国の伝統的工芸品に認定されました。その素朴で深みのある味わいは、日本の美意識にマッチしていて、多くの人々に愛されています。

海外での評価

近年、南部鉄器はヨーロッパや中国を中心に大きな人気を博しています。特に、カラフルでスタイリッシュなデザインの鉄瓶・急須がヨーロッパで注目を集めています。また、中国では南部鉄瓶で沸かしたお湯が中国茶に合うとして人気があり、2010年の上海万国博覧会にも出展されました。

まとめ

南部鉄器は伝統的な製品だけでなく、現代の生活様式に合わせた商品開発も行われています。フライパンや鍋敷き、キャンドルスタンドなど、日常生活に取り入れやすい製品が多く作られています。また、新元号を記念した梅の花モチーフの南部鉄器や、人気キャラクターとコラボした鉄瓶なども製作されており、時代のニーズに合わせた展開が行われています。

 

南部鉄器は、400年以上の歴史を持つ日本の伝統工芸品です。その優れた機能性と独特の美しさは、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。鉄瓶やフライパンなどの実用的な製品から、風鈴やアクセサリーなどの装飾品まで、幅広い製品が作られており、現代の生活にも溶け込んでいます。南部鉄器は単なる道具ではなく、日本の文化と技術の結晶です。適切に使用し、丁寧にお手入れすることで、世代を超えて受け継ぐことのできる価値ある品となります。南部鉄器を使うことは、日本の伝統工芸を守っていくことにもつながるのです。