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九州の焼き物とは|土地の歴史を感じられる、三つの器

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12月 19, 2025
九州の焼き物とは|土地の歴史を感じられる、三つの器

九州は、日本の焼き物文化の根幹を成す土地です。 磁器が生まれ、民藝が育ち、生活の器が磨かれてきた場所と言えます。

その中でも波佐見焼・有田焼・小鹿田焼は、それぞれ異なる思想と役割を担いながら、今も私たちの暮らしに息づいています。本記事では、三つの焼き物の成り立ちと特徴、そして現代の生活の中でどのように使われているのかを、器の視点から紐解いていきます。

 

 

九州の焼き物の歴史|磁器と民藝が交差した土地

九州は、日本の焼き物史において特異な位置を占める地域です。 なぜなら、日本で初めて磁器が生まれた場所であり、同時に民藝思想が深く根づいた土地でもあるからです。

17世紀初頭、現在の佐賀県有田で磁器の原料となる陶石が発見され、日本の焼き物は大きな転換点を迎えます。それまで主流だった土ものの陶器に加え、白く硬質な磁器が生まれ、食文化や流通のあり方までも変えていきました。

有田で始まった磁器文化は、周辺地域へと広がり、波佐見では日用品としての磁器が発展します。一方、山間部では磁器とは異なる文脈で、土と手仕事を中心とした焼き物が育まれました。その代表が、大分の小鹿田焼です。

九州の焼き物の特徴は、「一様ではない」ことにあります。輸出を見据えた洗練、庶民の生活を支える量産、自然に委ねる民藝。それぞれが同時代に存在し、土地ごとに異なる役割を担ってきました。

つまり九州は、 制度としての焼き物と、暮らしとしての焼き物が交差する場所と言えるわけです。

この多層的な歴史があったからこそ、今も波佐見焼・有田焼・小鹿田焼は、それぞれ異なる思想を保ったまま、現代の生活に生き続けているのです。

 

波佐見焼とは?|日常を設計する、機能の磁器

    波佐見焼(はさみやき)は、長崎県波佐見町で作られる磁器です。400年以上の歴史を持ちながら、その本質は常に「日常」にありました。

    華美な装飾よりも、量産性・耐久性・使いやすさ。江戸時代には庶民の器として全国へ流通し、「割れてもまた買える器」として生活を支えてきました。

    白磁に呉須(ごす)の染付という伝統的な佇まいは、料理や飲み物の色を受け止める“背景”として機能します。 器が主張しすぎないことで、使う側の判断や動作がスムーズになる。
    それが波佐見焼の設計思想です。

    波佐見焼のコーヒーフィルターと、日常のリズム

    波佐見焼は、コーヒーフィルターやドリッパーといった現代の道具とも自然に馴染みます。磁器は吸水性がほとんどなく、香りや油分を残しにくいため、コーヒーの味を安定して引き出せます。

    軽く、扱いやすく、洗いやすい。 朝の限られた時間の中で、考えなくても手が伸びる器。

    波佐見焼は、コーヒーという日常行為を“滞らせない”ための器でもあります。

     

    有田焼とは?|白磁に思想を宿す、日本最古の磁器

    有田焼は、佐賀県有田町を中心に焼かれる日本最古の磁器です。17世紀初頭、日本で初めて磁器の原料が発見されたことで誕生しました。

    有田焼の白磁は、単なる「白」ではありません。 土の精製、焼成温度、釉薬の透明度。そのすべてが計算された結果として生まれる、張りのある白です。

    そこに施される絵付けは、装飾であると同時に思想の表現でもあります。余白をどう残すか、線をどこで止めるか。有田焼は「描く磁器」でありながら、非常に理性的な器です。

    有田焼とコーヒー|静かな緊張感のある一杯

    有田焼のコーヒーカップやコーヒーフィルターは、時間を整える器です。白磁の中に落ちるコーヒーの色は、液体そのものの存在感を際立たせます。

    装飾があっても騒がしくならないのは、磁肌の静けさがあるから。来客時や、気持ちを切り替えたい時間に、自然と選びたくなる器です。有田焼は、日常を少しだけ「正す」力を持っています。

     

    小鹿田焼とは?|作為を手放した、民藝のかたち

    小鹿田焼(おんたやき)は、大分県日田市の山あいで作られる陶器です。江戸時代中期から続き、技法は一子相伝で受け継がれてきました。

    飛び鉋、刷毛目、流し掛け。それらは装飾というより、作業の痕跡です。均一を目指さず、揃えすぎない。自然の力と人の手が交差した地点に、小鹿田焼の表情は現れます。

    小鹿田焼の茶碗|毎日の手に、自然に馴染む器

    小鹿田焼の汁椀は、使うことで完成する器です。土の粒子が残る肌は、湯気をやわらかく受け止め、手に取ったときの感触にも温度があります。

    味噌汁をよそえば、器が主張しすぎることなく、汁の色や具の気配を静かに支える。一方で、盛りのよい高台とほどよい深さは、ごはん茶碗として使っても違和感がありません。

    完璧ではない輪郭が、かえって持ちやすく、置いたときの安定感につながる。用途を決めつけず、意識せずに使えて、ふとした瞬間に良さを感じる。

    小鹿田焼の汁椀は、これはこう使うものだという境界線を引かない器です。道具としての正解が、静かに、しかし確かに示されています。

     

    素材の違いが、器の役割を決める

    三つの焼き物は、素材によって明確に性格が分かれます。

    • 波佐見焼・有田焼:磁器

    • 小鹿田焼:陶器

    磁器は吸水性が低く、味や匂いが移りにくい。陶器は土の温度感があり、食事の気配を受け止めます。どれが優れているのかではなく、何をどう使うかで選ぶ。それが、焼き物との正しい付き合い方です。

     

    札幌・北円山のショップで出会う、九州のうつわ

    札幌・北円山にある『和モダンN6北円山』では、波佐見焼・有田焼・小鹿田焼をはじめ、日本各地の工芸品を実際に手に取り、質感や重さ、佇まいを確かめたうえで選ぶことができます。

    器は、写真や数値だけでは伝わらない要素を多く含んでいます。磁器の張り、陶器の土味、高台の収まり、口縁のわずかな厚み。それらは手に取った瞬間に初めて、身体的な理解として立ち上がります。

    店内には、日常使いに適した器から、食卓の空気を静かに変えるものまで、用途や思想の異なるさまざまな商品が並びます。どれも過度に主張せず、暮らしの中で使われることを前提とした佇まいです。

    和とモダンが交差する落ち着いた空間の中で、なぜこれを選ぶのかを、自分の感覚で確かめる。和モダンN6北円山は、そんな選び方ができる場所です。

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    また、一部商品に関してはオンラインショップでも取扱いをしております。他にも伝統工芸品やオリジナル製品まで幅広く取り扱っておりますので、興味がある方はアクセスしてみてください。

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    現代の暮らしに、九州の焼き物を

    和洋が混ざる現代の食卓でも、九州の焼き物は違和感なく溶け込みます。朝のコーヒーに波佐見焼、気持ちを整えたい一杯に有田焼、毎日のごはんに小鹿田焼。

    器を変えることは、暮らしのリズムを変えることです。九州の焼き物は、そのきっかけとして、ちょうどいい存在と言えるかもしれません。




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